近年、腸内細菌叢の組成が、肥満や2型糖尿病、炎症性腸疾患などの疾患リスクと関連している可能性に関して、様々な報告がされてきましたが、このたび新たにコレステロール値の低下に関連する腸内細菌の発見が報告されました。

 

この報告は米国ブロード研究所のRamnik Xavier氏らのチームからのもので、2024年4月の分子生物学の権威「Cell」誌に掲載されています。

本研究では、米国の住民ベースで長期に循環器疾患の原因を探求する「フラミンガム研究」の参加者のうち、1400人あまりの糞便サンプルを分析することで、Oscillibacter(オシリバクター)という腸内細菌を多く持つ人のコレステロール値がより低い傾向にあることを明らかにしました。さらに実験を通して、実際にこのオシリバクターがコレステロールを分解し、その副産物を体外に排出するメカニズムが確認されました。また、Eubacterium coprostanoligenes(ユーバクテリウム コプロスタノリゲネス)という別の腸内細菌もコレステロールの代謝に関与してコレステロール値を低下させることが示されました。

本研究により、腸内細菌によるコレステロール低下のメカニズムが部分的に解明され、腸内細菌が人間の健康に多岐にわたる影響を与える可能性があることが示唆されされました。本研究の筆頭研究者であるChenhao Li氏は、腸内細菌の相互作用がまだ十分に理解されていない中で、特定の細菌や遺伝子に焦点を当てた研究の重要性と、それがより効果的な治療戦略へとつながる可能性を強調しています。

 

この成果は、腸内細菌を利用した新たな医療アプローチの重要な一歩となるかもしれず、とても興味深い報告だと思います。このユニークな名前の細菌のさらなる報告や将来の臨床応用が楽しみですね!

 

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原著論文はこちら Li C, et al. Cell. 2024;187:1834-1852.

 

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