代々木上原駅前内科クリニック

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代々木上原駅前内科クリニック

消化器内科・肝臓内科

Gastroenterology

消化器領域のがんGastroenterology

消化器内科

日本におけるがんの罹患数、死亡数は年々増加の一途をたどっており、2016年においては実に37万人以上の方ががんで亡くなられました。
2016年現在、日本でのがん死亡数は
1位:肺がん、2位:大腸がん、3位:胃がん、4位:膵(すい)臓がん、5位:肝臓がん、6位:胆のう・胆管がん、7位:乳がん、8位:前立腺がん、9位:悪性リンパ腫、10位:食道がん
であり、実にがんの約6割が消化器領域に由来しています。

食道がん

日本人の食道がんは、約半数が胸の中の食道中央付近から発生し、次いで1/4が食道の下部に発生します。食道がんは、食道の内面をおおっている粘膜の表面にある上皮から発生します。日本では、食道がんの90%以上が扁平上皮がんです。

リスク要因

喫煙と飲酒が確立したリスク要因とされています。特に扁平上皮がんでは、喫煙と飲酒が相乗的に作用してリスクが高くなることも指摘されています。また、熱い飲食物がリスクを上昇させるという研究結果も多く報告されています。
近年、欧米で急増している食道腺がんでは、食べ物や胃液などが胃から食道に逆流する「胃・食道逆流症」に加え、肥満により確実にリスクが高くなるとされています。

症状

初期には自覚症状がないことが多く、食道がんの約2割は健康診断や人間ドックのときに内視鏡検査で発見されています。無症状で発見された食道がんは早期であることが多く、最も治る確率が高くなります。
がんの初期には、食べ物を飲み込んだときに胸の奥がチクチク痛んだり、熱いものを飲み込んだときにしみるように感じるといった症状がみられることがあります。症状が続く際は、軽く考えずに専門医を受診することをお勧めします。
がんがさらに大きくなると、食道の内側が狭くなり、食べ物がつかえて気が付くことになります。特に丸のみしがちな食物(硬い肉、すしなど)を食べたとき、あるいはよくかまずに食べたときに突然生ずることが多い症状です。このような状態になっても軟らかいものは食べられるので、食事は続けられます。
そのほか、胸痛・背部痛、咳、声のかすれなどの訴えから食道がんが見つかる方もいます。症状が続く時は食道も検査してもらうよう医師に相談してください。

統計

2016年の統計では食道がんはがん死亡数の第10位に位置しています。食道がんにかかる率や死亡率は40歳代後半以降増加し始める傾向にあり、特に男性は女性に比べて急激に増加します。
罹患(りかん)率、死亡率ともに男性のほうが高く、女性の5倍以上です。

胃がん

胃がんは、胃の壁の最も内側にある粘膜内の細胞が、何らかの原因でがん細胞になって無秩序に増殖を繰り返すことで生じます。がん細胞の組織型分類では、腺がんが胃がんのほとんどを占めています。細胞の分化度は、大きく分類すると分化型と未分化型に分けられ、一般的に、分化型は進行が緩やかで、未分化型はがん細胞の増殖が速いため進行が速い傾向があるといわれています。なお、未分化型は、特殊なタイプの胃がんであるスキルス胃がんだと誤解されることがありますが、未分化型であっても深達度(しんたつど)の浅い早期がんもあり、分化型でスキルス胃がんになることもあります。

リスク要因

胃がんの発生については多くの研究が行われており、いくつかのリスク要因が指摘されています。中でも、喫煙や食生活などの生活習慣や、ヘリコバクター・ピロリ菌の持続感染などが胃がん発生のリスクを高めると評価されています。
日本人のヘリコバクター・ピロリ菌の感染率は、中高年で高く、若年層では近年低下傾向にあります。ヘリコバクター・ピロリ菌に感染した人のすべてが胃がんになるわけではありませんが、現在、除菌療法が胃がんにかかるリスクを低くするという研究結果が集積されつつあります。感染していることがわかれば除菌療法が推奨され、除菌成功後も定期的な胃の検診を受けることが勧められます。
感染の有無に関わらず、禁煙する、塩や高塩分食品のとり過ぎに注意する、野菜、果物が不足しないようにするなどの配慮が重要となります。

症状

胃がんは、早い段階で自覚症状が出ることは少なく、かなり進行しても無症状の場合があります。代表的な症状は、胃の痛み・不快感・違和感、胸やけ、吐き気、食欲不振などがありますが、これらは胃がん特有の症状ではなく、胃炎や胃潰瘍の場合でも起こります。検査をしなければ確定診断はできませんので、症状に応じた胃薬をのんで様子をみるよりも、まずは医療機関を受診し、検査を受けることが重要です。症状の原因が、胃炎や胃潰瘍の場合でも、内視鏡検査などで偶然に、早期胃がんが発見されることもあり、貧血や黒色便が発見のきっかけになる場合もあります。食事がつかえる、体重が減る、といった症状は、進行胃がんの可能性もあるため、早めに医療機関を受診する必要があります。

統計

胃がんの罹患(りかん)率は40歳代後半以降に高くなります。日本全体では、一昔前の同年代の人々と比べると、人口10万人あたりの罹患率は男女とも大きく減ってきていますが、高齢化のために胃がんにかかる人の全体数は横ばいです。がんで亡くなった人の数では、全がんの中で胃がんは2016年時点で男性では2位、女性では3位ですが、以前と比べると、胃がんで亡くなる人の割合は減ってきています。罹患率の国際比較では、東アジア(中国、日本、韓国など)や南米で高く、欧米など白人では低くなっています。一方、日本国内では、東北地方の日本海側で高く、南九州、沖縄で低い「東高西低」型を示しています。

大腸がん

大腸がんは、長さ約2mの大腸(盲腸・結腸・直腸)に発生するがんで、日本人ではS状結腸と直腸にがんができやすいといわれています。
大腸粘膜の細胞から発生し、腺腫(せんしゅ)という良性のポリープの一部ががん化して発生するものと、正常な粘膜から直接発生するものがあります。

リスク要因

大腸がんの発生要因として、生活習慣では飲酒や肥満が、食生活では赤肉(牛・豚・羊の肉)や加工肉(ベーコン、ハム、ソーセージなど)の摂取増加が指摘されています。身体的な要因としては、高身長の人ほど発症リスクが高い傾向にあります。遺伝的な要因としては、直系の親族に家族性大腸腺腫症とリンチ症候群(遺伝性非ポリポーシス性大腸がん家系)にかかった人がいるという家族歴が知られています。

症状

早期の段階では自覚症状はありませんが、多い症状としては、血便、下血、下痢と便秘の繰り返し、便が細い、便が残る感じ、おなかが張る、腹痛、貧血、原因不明の体重減少などがあります。中でも出現の頻度が高い血便については、痔(じ)などの良性疾患でも同じような症状が起こるため、大腸がんの早期発見のためには早めに専門科を受診することが大切です。時には、がんによる腸閉塞症状から嘔吐などでがんが発見されることや、大腸がんの転移が、肺や肝臓の腫瘤(しゅりゅう)として先に発見されることもあります。

統計

大腸がんにかかる割合は、40歳代から増加し始め、50歳代で加速され、高齢になるほど高くなります。大腸がんの罹患(りかん)率、死亡率はともに男性では女性の約2倍と高く、部位別では結腸がんより直腸がんにおいて男女差が大きい傾向があります。大腸がんの増加には、主として結腸がんの増加が影響しています。罹患率の国際比較では、結腸がんは日本人より欧米白人の方が高いことが知られていましたが、最近では、結腸がん・直腸がんともに、日本人はアメリカの日系移民および欧米白人とほぼ同じになっています。

膵(すい)臓がん

膵臓にできるがんのうち90%以上は、膵管の細胞にできます。これを膵管がんといい、膵臓がんは、通常この膵管がんのことを指します。
わが国では、毎年30,000人以上の方が膵臓がんで亡くなっています。しかし、残念なことに、その診断と治療はいまだに難しいことが知られています。膵臓は体の深部に位置し、胃・十二指腸・小腸・大腸・肝臓・胆のう・脾臓などに囲まれているため、がんが発生しても見つけるのが非常に難しいのです。その上、どんな人が膵臓がんになりやすいのかもよくわかっていません。また、早い段階では特徴的な症状もありません。このため、胃がんや大腸がんのように早期のうちに見つけることは難しく、膵臓がんとわかったときにはすでに進行していることが多いのです。治癒のためには早期発見はとても重要ですので、どうしたら早く発見できるかという研究が意欲的に続けられています。

原因

膵臓がんを起こす危険因子として糖尿病、慢性膵炎、肥満、喫煙などがあげられていますが、はっきりした原因の解明にはいたっていません。これらのうち、喫煙は確立した危険因子です。

症状

早期の膵臓がんに特徴的な症状はありません。膵臓がんの方が病院へ来られた理由を調べてみますと、最も多いのは胃のあたりや背中が重苦しいとか、何となくおなかの調子がよくないとか、食欲がないなどという漠然としたものです。このほかに、体重の減少などもよく起こります。このような症状は膵臓がんでなくてもいろいろな理由で起こるものです。
比較的膵臓がんに関連のある症状として、体や白目が黄色くなる黄疸(おうだん)があります。黄疸が出ると、体がかゆくなったり、尿の色が濃くなったりします。黄疸は、膵頭部にがんができて、胆管が詰まってしまったときに起こるのですが、胆石や肝炎などが原因の場合もあります。そのほか、膵臓がんができると、糖尿病を発症したり血糖のコントロールが急に悪くなったりすることがあります。

統計

年齢別にみた膵臓がんの罹患(りかん)率は60歳ごろから増加して、高齢になるほど高くなります。年齢調整死亡率の年次推移は、男女とも戦後1980年代後半まで増加し、1990年代以降は横ばいまたは緩やかに増える傾向にあります。年齢調整死亡率は、男性の方が高く、女性の約1.6倍です。罹患数は死亡数とほぼ等しく、膵臓がん罹患者の生存率が低いことと関連しています。
年齢調整死亡率の国際比較では、以前は日本の膵臓がんの死亡率は低いレベルでしたが、1960年代から80年代後半まで増加し、欧米諸国並みになった後、緩やかに増加しています。罹患率の国際比較では、最も高いのはアメリカ黒人ですが、日本人も高いレベルにあります。

胆のうがん

胆のうや胆のう管にできた悪性腫瘍を胆のうがんといいます。また胆のうがん、胆管がん、乳頭部がんを合わせて胆道がんと呼びます。胆のうポリープで10mm以上あり、かつ増大傾向を認める場合、あるいは大きさに関わらず広基性病変(粘膜の表面からなだらかに隆起している病変)である場合は胆のうがんである可能性が高く、胆のう摘出術が推奨されます。特定の生活習慣や食事と胆のうがんの関連については、今のところ明らかなものはありません。
胆のうがんが胆のう壁内にとどまっている段階では無症状であることが多く、検診の腹部超音波(エコー)検査や胆石症による胆のう摘出術で、偶然発見されることもあります。

症状

胆のうがんは初期の段階では無症状です。進行するにつれて腹痛(みぞおちや右脇腹の痛み)、悪心嘔吐、体重減少、黄疸などが出現することがあります。

統計

わが国の2013年の胆のう・胆管がん死亡数は男性約8,900人および女性約9,300人で、それぞれがん死亡全体の4%および6%を占めます。胆のう・胆管がんの年齢調整罹患率は、男女とも1975年から1980年代後半まで増加傾向でしたが、近年は減少傾向です。胆のう・胆管がんの罹患率の国際比較では、日本人は他の東アジアの国、アメリカの日系移民、欧米人に比べて高い傾向にあります。

肝臓がん

日本では、肝細胞がんの約60%がC型肝炎ウイルス(HCV)の持続感染、約15%がB型肝炎ウイルス(HBV)の持続感染に起因すると試算されています。このため、日本の肝がんの予防としては、肝炎ウイルスの感染予防と、持続感染者に対する肝がん発生予防が柱となります。B型、C型肝炎ウイルスに感染すると、B型肝炎では約10%、C型肝炎では約70%の割合で慢性肝炎に至ることが明らかになっています。慢性肝炎になると、炎症が続くことで肝臓の繊維化が進み、肝硬変や肝がんになりやすくなります。したがって、B型慢性肝炎、C型慢性肝炎、肝硬変の状態を、「肝がんの高危険群(ハイリスクグループ)」といいます。さらに、高危険群の中でも、肝臓の線維化の進行度合いや高齢であること、高ウイルス量や飲酒歴などの因子によって、発がんリスクがより高くなるとされています。
その他に、ウイルス感染以外の肝がんのリスク要因として、大量飲酒と喫煙、さらに食事に混入するカビ毒のアフラトキシンが確実とされています。また、最近の傾向として、アルコール摂取歴がほとんどない脂肪肝(非アルコール性脂肪肝炎)が原因で肝硬変、肝がん発がんに至るケースが増えてきています。糖尿病などの生活習慣病との関連も示唆されており、健康診断などで肝機能異常を指摘された場合には、たとえ肝炎ウイルス陰性であっても、一度肝臓専門医を受診することが推奨されます。最近の研究において、糖尿病患者でリスクが高いことや、コーヒー飲用者でリスクが低いことを示す報告があり、その確認が今後の課題となっています。

症状

肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、初期には自覚症状がほとんどありません。肝炎ウイルス検査を受けなかったために自分が肝炎にかかっていることを知らず、医療機関での定期的な検診や精密検査、他の病気の検査のときにたまたま肝がんが発見されることも少なからずあります。

統計

年齢別にみた肝臓がんの罹患(りかん)率は、男性では45歳、女性では55歳から増加し始め、70歳代に横ばいとなります。年齢別にみた死亡率も同様な傾向にあります。罹患率、死亡率は男性の方が高く、女性の約2~3倍です。
肝臓がん罹患率と死亡率の年次推移を生まれた年代別にみると、男女とも1935年前後に生まれた人で高くなっています。これは、1935年前後に生まれた人が、日本における肝臓がんの主な要因であるC型肝炎ウイルス(HCV)の抗体陽性者の割合が高いことと関連しています。
日本国内の死亡率の年次推移は、男女とも最近減少傾向にあり、罹患率は男性で減少、女性で横ばい傾向にあります。死亡率の国内の地域比較では、東日本より西日本の方が高い傾向にあります。

(2017国立がん研究センターがん対策情報センターがん情報サービスより引用)

良性疾患Gastroenterology

逆流性食道炎

原因

食道裂孔ヘルニア=胃の入り口=噴門の筋肉(括約筋)がゆるい、噴門を外から取り巻く横隔膜裂孔が広すぎる、胃酸過多や食べ過ぎ・飲み過ぎなどが原因です。強い逆流性食道炎を放置すると酸逆流による食道がん(バレット腺癌)のリスクが増加するとの報告もあります。

症状

食後または空腹時、夜間に胸がやける、酸っぱいものがあがる、苦いものが上がるなどの症状が出ます。ものが飲み込みにくい、飲み込むときに胸につかえることもあります。胸だけでなくのどに違和感やつかえ感を覚えたり、不快なゲップを頻回に感じるケースも多いです。ひどくなると1日中胸部~みぞおちに疼痛を感じる場合もあります。

治療

多くの方が胃酸の分泌を抑える薬を服用することで症状の改善が認められます。また、生活上の注意のみで症状が軽減する方もいます。具体的には、食後すぐに横にならない、アルコール・香辛料などの刺激物・脂っこい食物を避ける、枕を高くして寝たりベッドをリクライニングする、前かがみで坐る姿勢を長く続けない、腹部を強く締め付けない、などが有効になることがあります。
巨大な裂孔ヘルニアなどにより難治性の場合は外科的治療の適応が検討されることもあります。

機能性ディスペプシア(FD)

機能性ディスペプシア(Functional Dyspepsia:FD)とは、症状の原因となる器質的疾患がないにもかかわらず、以下の4つの症状のうち、1つ以上が3ヶ月以上続く状態をいいます。

  • ①わずらわしい食後のもたれ感(腹部膨満感
  • ②食べ始めてすぐに満腹になってしまうこと(早期満腹感)
  • ③みぞおちの痛み(心窩部痛)
  • ④みぞおちが焼けるような感じ(心窩部灼熱感)

それ以外にも、胃のむかつき、食欲不振、吐き気、嘔吐など、人によって様々な症状が出現します。
特に①、②の症状を持つタイプは食後愁訴症候群(Postprandial Distress Syndrome:PDS)、③、④の症状を持つタイプは心窩部痛症候群(Epigastric Pain Syndrome:EPS)に分類されます。

原因

様々な複合要因の関与が考えられており、胃の形態異常、遺伝素因、胃運動機能異常(胃が十分に動かず、食べたものをうまく消化できない状態)、胃酸過多(胃酸の出過ぎ)、胃の知覚過敏(小さな刺激に反応してしまう状態)、ストレスなどの心理的要因、酒やたばこなどの生活習慣、またヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)への感染の関与も報告されていますが、まだ決定的な原因の特定にはいたっておりません。

検査

内視鏡検査:胃潰瘍や胃がんなど、炎症や潰瘍、腫瘍などを伴う病気でないことを確認する必要があります。

治療

多くの方は症状に応じて酸分泌抑制薬や消化管運動機能改善薬を調節することで症状の改善が見られます。また環境的な要素が強い状況があれば、食事や睡眠等の生活習慣の乱れを改善したり、心理的要因を解決するだけでも症状が緩和することもあります。一般的に症状は長期に続く傾向にあり、時期により症状が変化することも多いので、何より信頼できる専門医の下でじっくり治療に取り組むことが重要と言われています。「機能性消化管疾患診療ガイドライン2014―機能性ディスペプシア(FD)」(2014)

萎縮性胃炎

萎縮性胃炎とは、慢性的な胃炎が長期間に渡って続くことによって、胃酸を分泌する胃腺が縮小してしまい、胃の粘膜が薄くなってしまう病気のことです。萎縮性胃炎の原因はヘリコバクター・ピロリ菌の持続感染であることはすでにわかっており、50歳以上の日本人の8割以上がこのピロリ菌に感染しているといわれています。我が国ではこのヘリコバクター・ピロリ菌感染による慢性胃炎は保険診療により除菌治療が認められております。除菌治療が成功すると、胃の炎症所見が改善するほか、萎縮粘膜も長期的に改善が認められることが報告されています。なにより最終的に胃癌の発症予防効果への期待が非常に強く持たれており、除菌治療が強く勧められる疾患とされています。

胃十二指腸潰瘍

通常、我々の胃や十二指腸の内側の粘膜組織は、強い酸性の胃酸や消化酵素を含む胃液にさらされているため、胃液によって粘膜が傷つかないようにするための仕組みを持って守られています。胃潰瘍・十二指腸潰瘍は、この防御機構が傷害されて粘膜が傷つき、そこが胃液の攻撃にさらされることで、胃や十二指腸の粘膜や組織の一部が欠損する疾患です。
最初は主に空腹時や夜間にみぞおちに鈍い重苦しい痛みが出ることが多いですが、時に胃潰瘍では食後や食事と無関係に痛みが出ることもあったり、潰瘍が深いと背中まで痛むこともあります。潰瘍から出血すると黒い血のかたまりやコーヒー色の吐物(コーヒー残渣様)を吐いたり、コールタールやイカ墨のような真っ黒の便(タール便)が出たりします。出血が多ければ新鮮血吐血やショック症状が見られ時に致命的です。また潰瘍が深くなり過ぎれば穿孔(穴が開くこと)し急激な腹痛を訴え腹膜炎の症状を呈します。
我が国の胃・十二指腸潰瘍患者の90%以上がヘリコバクター・ピロリ菌の持続感染状態にあるとされ、除菌治療により潰瘍の再発が劇的に抑制できることがわかっています。そのほかに胃酸の過剰、ストレス、アルコールやたばこ、胃壁の血流や薬物の副作用等が複雑に関連しています。特に鎮痛剤(痛み止め)などの一部の薬が潰瘍の直接の原因になることもあります。

炎症性腸疾患

主に潰瘍性大腸炎とクローン病の2つの疾患を指します。これらの疾患は発病の原因が明らかではなく、若年者に比較的多く、良くなったり悪くなったりを繰り返す慢性・難治性の消化管疾患です。厚生労働省より特定疾患に指定されており、年々増加傾向にあります。

潰瘍性大腸炎

直腸粘膜から発症し、大腸粘膜に連続したびらんや潰瘍を形成する疾患です。病変部位により、全大腸炎型、左側大腸炎型、直腸炎型に分類されます。
主に粘液便や粘血便から気づかれることが多く、信仰すると発熱や腹痛、下痢などを認めます。
診断には臨床症状に加え、内視鏡検査が重要です。
長期間にわたる慢性例ではで大腸癌の危険性が高まることが指摘されています。

クローン病

10~20代の若年者に好発し、口から小腸、大腸、肛門までのすべての消化管に慢性炎症をきたします。
症状は腹痛、下痢、発熱や栄養の吸収障害による低栄養や貧血などを認めます。痔ろうや肛門周囲膿瘍が初発症状であることも多く、若年者でこれらの病変を見た場合、クローン病を念頭に考える必要があります。消化管の非連続性の縦走潰瘍(腸の縦方向に一致して長く延びる)が特徴で、狭窄による腸閉塞や腸穿穿孔により手術療法が必要とされることもあります。

過敏性腸症候群

IBS(過敏性腸症候群)」は、おもにストレスに起因して、下痢や便秘を慢性的にくりかえす疾患です。
その症状によって「下痢型IBS」、「便秘型IBS」、「混合型IBS」、3つに分類できない「その他」の4タイプがあり、便の形状によって分類されます。
大腸がんや潰瘍性大腸炎などは血液検査や大腸内視鏡検査などで腸に異常が認められますが、IBSは、検査でそうした異常はないことが確認されたうえで、症状が続く場合に診断されます。
日本人のおよそ7人に1人がIBSに当てはまると推定されており、30代より若い年代に比較的多くみられる傾向があります。重症の場合は、トイレの問題で学校や会社に行けなくなったり外出を控えるようになったりするなど、生活の質を低下させることが問題になっています。

ウイルス性肝炎

肝炎ウイルスに感染して肝臓の細胞が障害される病気で、急速に肝細胞が破壊される急性肝炎,劇症肝炎と,長期間(6ヶ月以上)にわたり軽度の肝障害が続く慢性肝炎に分類されます。慢性肝炎は治療せず放置すると肝硬変や肝細胞がんになることがあります。肝炎ウイルスには現在5種類のものが確定さていて、A型、B型、C型、D型、E型肝炎と呼ばれています。日本で問題になるのは、ほとんどがA型、B型、C型の3種類です。最近E型急性肝炎の報告が増加しつつあります。

A型肝炎

症状

ウイルスに感染後2~7週間で発症します。典型的な症状は発熱、全身のだるさ、むかつき、食欲不振で、頭痛、関節痛などが伴うことがあり、風邪やインフルエンザ様の症状です。発症後約1週間前後で黄疸が出現します。まれに劇症化して死亡する例を除き、1~2ヶ月の経過の後に回復します。慢性化はありません。

原因

A型肝炎ウイルスは患者の便に排出され、この便に汚染された水・果物・野菜・貝類・氷などを介して感染します(糞口感染)。日本ではカキ、二枚貝の生食などが原因になることが多いようです。また中国,インド,東南アジアやアフリカなどに旅行して感染することもあります。季節的に1~5月に多く発症します。
衛生環境の整っていない地域では生水は決して飲まず、生の魚介類は食べないようにしてください。アフリカ、アジア、中南米への渡航者にはA型肝炎の予防接種が勧められており、16歳以上の人が受けることができます。

治療

まず自然治癒を高める安静臥床が必要です。特別な薬はなく、肝庇護剤を使うことがあります。
まれに劇症化して死亡する例を除き、1~2ヶ月の経過の後に回復します。慢性化はありません。

B型肝炎

B型肝炎は、成人がB型肝炎ウイルスに感染したときに一過性に発症する急性肝炎と持続感染者に起きる慢性肝炎の2つに大きく分けられます。
B型急性肝炎は感染後1~6ヶ月位で発症します。全身倦怠感、食欲不振、悪心、嘔吐、褐色尿、黄疸などが出現します。一方B型慢性肝炎では症状はほとんどありませんが、慢性肝炎が急性増悪した場合は、急性肝炎と同様の症状を認めることがあります。

原因

B型肝炎ウイルス感染者の体液・血液を介して感染し、感染時期や感染時の抵抗力によって持続感染や一過性感染を起こします。
思春期以降にB型肝炎ウイルスに感染すると、多くの場合一過性感染で終わります。感染原因のほとんどはウイルス持続感染者との性交渉ですが、他に入れ墨,ピアスの穴あけ、かみそりや歯ブラシの共用、注射器の回し打ちなどウイルス陽性の血液が付着したままの器具を使用すると一過性感染を起こします。一過性感染の場合、感染後急性肝炎を起こすことがしばしばあります。思春期以後の感染でも一部の遺伝子型では持続感染に移行することがあります。
配偶者や家族がHBV持続感染である場合は感染予防のためワクチン接種をお勧めします。

経過

母子感染した子供は持続感染者となることが多く、一部は思春期以降に肝炎として発症します。内80~90%は10~30歳台に強い一過性の肝炎を起こし、その後肝炎は終息しますが、残りの10~20%は慢性肝炎に移行し、その中から肝硬変になる人がいます。
成人してからの感染ではたいてい急性肝炎として発症します。数%の割合で重症化することがありますが、一般的には数週間で回復過程に入ります。ただし急性肝炎でも遺伝子型Aの場合は持続感染し、慢性肝炎となることがあり要注意です。

治療

急性B型肝炎は一般的に抗ウイルス療法はせず、自然回復を待ちます。しかし重症化が危惧される場合は抗ウイルス薬や血漿交換、最終的には肝移植が必要になることもあります。最近増加しつつある遺伝子型Aは慢性化が約10%と報告されており、慢性化が危惧される場合は、早期より抗ウイルス剤で治療します。
慢性B型肝炎の治療は、抗ウイルス薬であるペグインターフェロン(注射薬)や核酸アナログ(内服薬)を用いてウイルス増殖を持続的に抑制することが目標になります。年齢、ウイルス量、ウイルスの遺伝子型、肝臓の線維化の程度などで治療法が異なり、基本はガイドラインに沿って治療することになります。
慢性B型肝炎では,インターフェロンや核酸アナログ治療について公的な医療費助成の申請ができます。詳しくは専門医またはお住まい近隣の保健所にご相談ください。

C型肝炎

C型肝炎とは、肝炎を起こすウイルス(C型肝炎ウイルス)の感染により、6ヵ月以上にわたって肝臓の炎症が続き、細胞が壊れて肝臓の働きが悪くなる病気です。
初期にはほとんど症状はありませんが、放置しておくと、長い経過のうちに肝硬変や肝がんに進行しやすいことが知られています。現在わが国には100人に1~2人の割合で、C型肝炎の患者さん、あるいは本人も気づいていないC型肝炎ウイルスの持続感染者(キャリア)がいると推測され、“21世紀の国民病”とまでいわれています。

原因

C型肝炎ウイルスは感染者の血液を介して感染します。過去に輸血、血液製剤、注射針の使い回しなどで感染したものと考えられています。現在問題となるのは、ピアスや入れ墨、覚せい剤などの回し打ち、あるいは不衛生な状態での鍼治療などです。性交渉による感染や母子感染はごくまれとされています。

経過

感染して2~14週間で急性肝炎を起こすことがありますが、大部分は症状もなく不顕性感染に終わります。60-80%が慢性肝炎に移行し、感染して約20年で30-40%の患者さんが肝硬変に進行します。肝硬変になると年率約7%で肝がんの出現を認めます。特に高齢者では慢性肝炎から肝がんが出現することがあります。

治療

まずC型肝炎ウイルスの排除を目指して、インターフェロンを使わない経口抗ウイルス薬による治療が主な治療となってきており、遺伝子型Ⅰ型に対する経口抗ウイルス薬は、ほぼ100%に近い確立で、ウイルスが排除できるとされています。副作用や合併症など抗ウイルス薬が使えない場合や治療が無効な場合は、対症療法としてグリチルリチン配合剤やウルソデオキシコール酸の服用、瀉血療法などで肝炎の沈静化を図ります。
C型肝炎では抗ウイルス薬の医療費助成制度があります。詳しくは受診先の肝臓学会専門医または医療機関の相談窓口、保険所にご相談ください。

脂肪肝・NASH

肝臓に過剰に脂肪が沈着した状態を脂肪肝と言います。
脂肪肝にはアルコールが原因のアルコール性脂肪肝と、肥満や糖尿病、過食などによる非アルコール性脂肪肝があります。アルコールが原因の脂肪肝はやがて悪化して肝硬変になりますが、アルコール摂取が殆どないにもかかわらず脂肪肝から肝炎、肝硬変に進行するものを非アルコール性脂肪性肝炎(Non-alcoholic Steatohepatitis:NASH)と呼んでいます。

症状

脂肪肝、脂肪性肝炎の自覚症状はほとんどなく、検診や他の疾患で受診した際に腹部超音波検査や血液検査の異常で偶然発見される例がほとんどです。

治療

脂肪肝の治療には食事制限や定期的に運動をするなど日常生活を改善することが重要です。
NASHでは長い年月をかけて肝硬変へと進行し、肝癌を発症することもあり、治療を継続しながら定期的に医療機関を受診し、経過をみていくことが大切です。
NASHにおいて現在確立した薬物治療法はなく食事カロリー制限や定期的な運動など日常生活の改善が重要です。体重減少がNASHの改善に有効とされています。また糖尿病や高血圧などに対してきちんと薬物療法を行うことも重要です。
アルコール性脂肪肝の治療は禁酒・節酒です。薬物治療は基本的にはありません。

急性膵炎

通常膵臓で生産、貯蔵される消化酵素は、通常食事の刺激に応じて膵管を通って十二指腸に分泌された後に初めて活性化されます。しかし、何らかの要因により膵管の内圧が上昇したり、膵液分泌が過剰になったり、感染した胆汁が膵管内に逆流したりすると、貯留している消化酵素が膵管内で活性化してしまい、膵臓自体を消化してしまいます。この自己消化が膵炎です。重症化しなければ、一般に可逆的です。

原因

アルコールであることが最も多く、次いで胆石ですが、原因不明も1/4ほどあるともいわれています。

治療

治療の中心は点滴による循環動態の維持です。膵炎の炎症が全身に回ることで全身を循環する水分の減少が生じ、多臓器障害を引き起こします。そのため尿量などを確認しながら大量の点滴を行います。状況に応じて、膵臓の酵素を押さえる薬(膵酵素阻害剤)の点滴や、膵臓の周囲の感染を防ぐ目的で、抗生物質を使用します。
多くは、膵臓の浮腫を主徴とする軽症膵炎で後遺症もなく治りますが、時に重症化すると、呼吸、循環、腎不全などの多臓器不全や、感染症を併発して致命的な状況となります。

胆石症

胆石とは肝臓から分泌される消化液の一種である胆汁の成分が石のように固まったものです。胆汁は肝臓で作られたのちに胆管という管を通って最終的に十二指腸に流れます。この胆管の途中に胆嚢がぶら下がっていて、入ってきた胆汁を濃縮して貯めておき、食事の刺激で収縮して胆汁を効率よく十二指腸に送り出す働きをしています。
胆嚢の中にできた石を胆嚢結石、胆管の中にできた石を胆管結石と呼びます。単に胆石と言った場合は通常胆嚢結石を指します。

症状

腹痛は最もよく出現する症状で、てんぷらや揚げ物など脂肪分の多い食事を食べたあとに、みぞおちから右の上腹部にかけて突然起こる激しい痛みが典型的です。右肩や背中に痛みが走ったり、時に嘔気、嘔吐を伴うこともあります。この腹痛は、胆石発作や胆道疝痛などとも呼ばれ、特徴的な痛みとされています。しかし、このような症状が全くでない患者さんも多く存在し、”無症状胆石”と呼ばれています。無症状胆石もずっと症状が無いわけではなく、年に2-4%の頻度で症状のある胆石症に変化しますので、安心はできません。
腹痛の症状を有する胆石を胆石症と呼びます。さらに発熱がある場合は急性胆嚢炎などの感染症の合併を疑い、黄疸がある場合は総胆管結石の存在を疑います。状況により緊急入院や手術を検討することもあります。

治療

一般的に無症状であれば経過を慎重に観察していきますが、腹痛発作を繰り返す胆のう結石や、無症状でも胆のう自体に炎症や腫瘍を疑う所見が見られる場合は積極的に胆嚢摘出術を検討することがあります。